PROJECT STORY 01

「高圧水素環境中
材料評価試験」
新需要開発&
拡販プロジェクト

2018年11月、コベルコ科研では国内最高レベルとなる圧力140Mpa・温度−80度〜+90度の性能を誇る『高圧水素環境下材料評価試験設備』を導入。水素自動車関連評価の需要の大幅増を見込み、運用を開始した。しかし、当初想定していたほど、案件獲得には至らぬまま月日は過ぎる…。そうした中で、2020年、営業・技術スタッフが結集し、製販一体で現状の打開を図るプロジェクトが発足。国内でも有数の設備活用に向けた新たな需要の掘り起こしと、拡販につながる評価技術・新メニューの開発に挑んだのだった。

PROFILE
  • K.Rさんのプロフィール写真
    K.R
    〈営業〉
    営業本部 社会インフラ営業部
    第一営業室
    電子商材専門商社での営業職を経て、2009年、コベルコ科研にキャリア入社。以降、樹脂関連の提案販売活動に従事し、2020年よりプロジェクトに参加。技術チームと連携し、営業チームをとりまとめ、プロジェクトを牽引する役割を果たす。
  • T.Nさんのプロフィール写真
    T.N
    〈技術スタッフ〉
    技術本部 材料ソリューションセンター
    腐食防食評価部 主任部員
    大学卒業後、コベルコ科研に入社。神戸事業所 分析解析部 腐食試験室に配属され、以後は材料ソリューションセンター 腐食防食評価部に所属。2019年には試験グループから、技術グループに異動。プロジェクトでは技術部門のリーダーとして活動。
  • O.Kさんのプロフィール写真
    O.K
    〈技術スタッフ〉
    技術本部 材料ソリューションセンター
    腐食防食評価部 主任部員
    2008年にコベルコ科研入社後は、技術本部 材料評価事業部 腐食防食技術部 評価試験室に配属される。2012年〜2015年にはグループ外企業への出向を経験した。現部署に復帰後、『高圧水素環境下材料評価試験設備』の立ち上げに携わる。

SECTION 01 国内有数の試験設備を使った
案件拡大を大きな目標に、
プロジェクトを発足。

水素自動車の普及をはじめとした水素社会の到来を見据えて、2018年にコベルコ科研が導入した『高圧水素環境下材料評価試験設備』は、当時民間では初導入となる希少な装置であり、同装置でしかできない高難易度の試験評価に社内をはじめ、顧客である大学や企業からも大きな期待が寄せられた。
コベルコ科研においても、高圧水素雰囲気環境下での評価試験の社会的な需要増、その中でも水素自動車関連の大幅な需要増を見込んでいた。しかし、自動車関連企業にアプローチするものの、当初思い描いていたような案件獲得には至らない状態が続いた。特に2019年は設備稼働率が低く、設備構築にかけた巨額の投資をいかに回収していくか、何か打開策はないかと、部署全体で検討され始めた。
そうして2020年初頭、「高圧水素環境中材料評価試験」新需要開発&拡販プロジェクトが発足される。プロジェクトでは、これまで以上に営業と技術側の連携が必要不可欠として、営業側のリーダーとしてK.Rが、技術側のリーダーとしてT.Nがアサインされ、そして技術スタッフとしてO.Kも選ばれた。特にO.Kには、「自分が立ち上げに参加した設備をもっと活用できるようにしたい。設備の強みをもっと発揮させたい」との熱い思いがあったのだった。

SECTION 02 営業と技術、
互いの理解を深めながら、
思いを一つにして
プロジェクトを推進。

プロジェクト発足後、アプローチ先をそれまでのメインであった水素自動車関連から、国家プロジェクトや社会インフラ関連にシフト。今まで知見のなかった分野にも広げる形で、3人は動き出した。
とはいえ、具体的な動きを決めるために情報整理から始める他なかった。その中でK.Rは、「まずはどこに、何を売るべきか」を検討し、それまでの販売実績データを検証していった。技術側では、O.Kが企業や学会などに赴いて研究者と面会し、情報収集に奔走。その情報をT.Nは、技術的検証を踏まえて取りまとめ、K.Rに提示するという流れでアプローチ先やアプローチ方法を地道に検討していったのだった。
拡販上の大きな課題だったのは一回ごとの試験にかかるコストが非常に高額なこと。とはいえ、安易に価格を下げれば、設備投資費の回収も遅延する。何よりも自分達の強みであるこの設備・技術の価値を貶めてしまうことになりかねない。
そんなジレンマを抱え、拡販活動を進める中で、時に営業側と技術側の衝突もあった。そうした中、T.Nは「営業と技術の垣根をなくすためには、どれだけ情報共有できるかが重要だ」と考え、社内システム上での日々の進捗管理や情報共有を徹底。この地道な活動のおかげと、3人が本音で議論を重ね、互いに思いを伝える中で認識のズレは解消されていく。

SECTION 03 2050年の
ゼロカーボン社会
実現に向けた
社会の動きを見逃さず、
動きを加速させる。

この変化は、プロジェクトにも良い影響を与えた。お互いの立場や考えに対する理解が深まり、次第に営業と技術の壁を超えた一体感が生まれていく。そこから、コベルコ科研にしかできない評価試験と他社でもできる評価試験を切り分けて価格を決定する、お客様が求めるデータのために新たな評価試験メニューを開発するといったことをはじめ、セールスを行うに際して、技術者が客先の技術者にわかりやすいPR資料や展示資料を作成する、セールス活動に技術者も同行するといった、まさに製販一体の拡販活動に繋がっていったのだった。この流れにK.Rも「営業と技術が連携することで、これ程の力が発揮できるのか! このプロジェクトを通して、改めて製販一体の本当の意味を理解できた」と痛感。一緒にセールス活動をするT.NとO.Kのことを実に頼もしく感じたのだった。
そんな中、2020年10月の臨時国会で、日本政府が2050年にカーボンニュートラルの実現を目指すことを宣言。これにより今後は、再生可能エネルギーとともに、脱炭素につながる水素やアンモニアなどの利活用とその技術に社会が注目し、動きが加速することが予想された。チームでは、この好機を見逃さず、国家プロジェクトや社会インフラ関連分野に向けたセールス活動をさらに活発化させていく。

SECTION 04 製販一体となった
拡販活動を通して、
わずか1年で
設備稼働率100%を達成。

プロジェクトの成果が出始めたのは、2020年の後半。コベルコ科研にしかできない高難度の評価試験への理解が浸透し、高額でも信用できるデータが欲しいとの企業が増えたのが大きな理由だった。別の影響として、ゼロカーボンの本格的な取り組みが進む中での市場のマインド変化もあったが、産総研や大学などの先行研究機関と整合性確認をするなど信頼性の高いデータをコベルコ科研が出していた実績も案件増大の弾みとなった。その中で受注ラッシュが続き、2021年は、試験機の稼働が100%を達成。2022年、2023年も安定した稼働率を記録したのだった。その中で3人は1年間で培った連携力を発揮して、納品スケジュールの管理や設備の安定稼働にも取り組んだ。
さらにプロジェクトではもう一つ、製販一体での提案スタイルが確立できたことも大きな成果だった。特に営業と技術がさまざまな課題を共有しながら、心を一つにして新たな需要を掘り起こし、案件増大に繋げていくことができたことは、コベルコ科研全体においても今後の成長に大きな意味を持つことだろう。またその中で生み出された新しい評価試験技術やメニューは、これからの水素社会やゼロカーボン社会実現における課題への新たなソリューションになると期待される。

EPILOGUE

2024年現在も、プロジェクトは継続されている。ただそのテーマは案件拡大ということからさらに発展して、これからのゼロカーボン社会実現において、コベルコ科研としていかに貢献していけるかにシフトしている。水素関連に収まらず、新たに取り組み始めたアンモニア関連の評価試験など、『高圧水素環境下材料評価試験』拡販プロジェクトを通して培った絆を発揮できる場面はますます広がっている。3人の活動はまだまだ終わることなく続いていく。