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化学反応・輸送方程式に基づく劣化モデル構築

  • リチウムイオン電池のサイクル特性シミュレーション
    化学反応・輸送方程式に基づく劣化モデル構築

    固相領域のLi輸送、液相領域のイオン輸送、固液界面における副反応などの物理モデルに基づいてリチウムイオン電池のサイクル劣化特性予測を行います。電池のサイクル劣化には多くのメカニズムが関与していますが、ここでは、初期劣化の主要因と考えられる正極活物質表面の構造変化、負極活物質表面のSEI膜成長を考慮したシミュレーション実施例と実測との比較について紹介します。

    • 正極(図上)および負極(図下)におけるサイクル劣化モデル
      正極(図上)および負極(図下)におけるサイクル劣化モデル

    左図はサイクル劣化モデルの模式図です。正極はNi, Mn, Coの3元系、負極はカーボンを想定しています。サイクルが進むに従って、正極活物質表面の構造転移相(Cubic相)が徐々に内側へ進行します。一方、負極活物質表面では溶媒の分解反応により不働態SEI膜が成長する様子をモデル化します。

    シミュレーション結果と弊社試作電池(2極式セル)による実測結果の比較を下図に示します。下図(a)の1、50、100サイクル後の放電曲線、(b)の電池容量とサイクル数の関係ともに、実測の傾向を良好に再現していることが分かります。

    また、下図(c)に示すように正極・負極それぞれの劣化寄与を分離して解析することが出来るのが、本モデルの大きな特徴です。

    サイクル後の正極・負極活物質の物理解析によると、それぞれ相転移層・SEI層の成長が見られたことから、本劣化モデルは妥当であると考えられます。

    このように、化学反応・輸送方程式に基づく劣化シミュレーションにより、各々の劣化因子が及ぼす影響を分離した上でサイクル特性を予測することが可能となります。他の種類の電池でも、ある期間のサイクル試験結果に基づき、いくつかの劣化メカニズムによる寄与を考慮した上で、長期予測が可能となります。従来用いられてきたルート則などの経験則に比べて、より精度良く予測することが期待出来ます。

  • シミュレーション実測結果との比較
    • (a)1,50,100サイクル後の放電特性の比較
      (a)1,50,100サイクル後の放電特性の比較
    • (b)電池容量とサイクル数の関係
      (b)電池容量とサイクル数の関係
    • c)正極・負極それぞれの因子による降下電圧とサイクル数の関係
      (c)正極・負極それぞれの因子による降下電圧とサイクル数の関係