コベルコ科研・技術ノート
こべるにくす
Vol.32
No.59
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- 最先端半導体プロセスの開発に貢献するウェハ表面金属汚染分析
技術再発見
今も活躍している当社のロングラン技術や製品をご紹介
最先端半導体プロセスの開発に貢献する
ウェハ表面金属汚染分析
半導体デバイスの微細化、高集積化、高性能化が極めて速いスピードで進展する中、その製造環境やプロセスにおける汚染の制御レベルもますます厳しくなっている。これらのニーズに対し当社は、長年、種々のサービスを提供し、分析・評価のノウハウを蓄積してきた。クリーンルームエアの分析から、部品・部材の清浄度や汚染状況の把握、汚染物質の発生源・発生プロセスの解析、汚染対策の効果の確認など、開発・管理・改善のために広くご活用いただいている。
半導体デバイスの微細化・高性能化のみならず、低炭素社会実現に向け、より高効率の電力変換を可能にする次世代パワーデバイスの社会的要請も高まっている。現在、半導体の基板材料の主流はシリコン(Si)であるが、今後は炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウム(Ga2O3)、ダイヤモンドなどの化合物半導体ウェハの利用拡大も見込まれる。このような半導体材料の変化に対しても、適切な方法を分析メニューとして展開している。本稿では、従来のSiウェハと化合物半導体ウェハの表面金属汚染について、高感度かつ高精度な分析値を得ることができる誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)法を紹介する。
事例 1 Siウェハ表面の金属汚染分析
第1図に、一般的なウェハ表面の金属汚染分析の流れを示す。Siウェハの表面汚染分析では、汚染金属の回収に気相分解(VPD:Vaper Phase Decomposition)法が多用される。VPD法は、密閉容器の中でフッ化水素酸蒸気をSiウェハ表面に付着させ、汚染金属と自然酸化膜とを溶解させる。このとき、Si表面は親水性から疎水性に変化することで、汚染金属の溶解液が液滴となり凝集するため、効率よく溶解液を回収できる。この回収液を高感度ICP-MSで測定することにより、極微量の汚染金属の定性・定量分析を行う。第1表Aに12インチSiウェハの定量下限値の一例を示す。12インチサイズの場合、107 ~ 109 atoms/cm2オーダーの分析値を得ることができる。なお、VPD法は、シリコン酸化膜や窒化膜、オキシナイトライド膜など各種膜中の金属分析にも広く利用されている。また、VPD法以外にも、薬液を直接滴下して処理する方法(DADD:Direct Acid Droplet Decomposition)などを目的に応じて選択、または組み合わせることもある。
事例 2 化合物半導体ウェハ表面の金属汚染分析
化合物ウェハを用いた半導体の製造プロセスにおいても、Siと同様に金属汚染がデバイスの電気特性に大きく影響するため、極微量レベルの金属汚染を把握し、制御する必要がある。SiCやGaNなどの化合物ウェハにおいても第1図に示す流れで分析を行う。ただし、SiCやGaNなどの化合物ウェハではSiウェハとは異なる表面物性を有しているため、金属汚染を回収する際には専用の前処理技術が必要となる。当社では、これら化合物半導体ウェハに対しても、蓄積したノウハウを発展させ、最適な前処理技術を保有している。第1表Bに、6インチSiCウェハ表面の金属汚染分析における定量下限値の例を示す。化合物半導体ウェハにおいても、最適化した分析条件・方法のもとSiウェハと同等の定量下限での分析が可能である。
第1図 ウェハ表面の金属汚染分析プロセス

第1表 ウェハ表面金属汚染分析における定量下限値の例

本稿ではウェハ表面の金属汚染分析の一部を紹介した。今後も、多様化するニーズに対応できるよう分析メニューをさらに充実させていく。