コベルコ科研・技術ノート

こべるにくす

Vol.33

No.61

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  4. "加熱発生ガス分析"で読み解く材料特性

技術再発見

今も活躍している当社のロングラン技術や製品をご紹介

"加熱発生ガス分析"で読み解く材料特性

材料を加熱した際に発生するガスには、臭気、毒性、腐食性や爆発性など周囲に悪影響を及ぼす成分が含まれていることがある。また、加熱による熱分解生成物からは、材料の化学構造や材料中の添加剤に関する情報を得ることもできる。このように、加熱によって発生するガス成分を分析することは、材料開発や品質管理、環境管理などの観点で必要不可欠なものとなっている。

代表的な加熱発生ガス分析法を第1表に示す。当社では、これら以外にも、独自開発法も含めたさまざまな手法を保有しており、目的や試料の特性に応じて適切な手法を選択して、お客様にとって有意な情報を提供してきた。本稿では加熱発生ガス分析の一例を紹介する。

第1表 加熱発生ガス分析手法

事例 1 エチレンプロピレンジエンゴムの熱分解挙動

材料を加熱した際のガスの発生挙動を正確に把握することで、安全管理や不具合発生の予測などに役立てることができる。高分子材料であるエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)について、昇温過程でのガス発生挙動をEGA-MS(発生ガス質量分析:Evolved gas analysis Mass Spectrometry)にて分析した例を第1図に示す。図の縦軸はガスの発生量と相関があり、150℃付近からガスが発生し、300℃および500℃付近でガス発生量が最も多いことが確認できる。また、質量分析計により得られた各ピークのマススペクトル解析を行った結果、150℃付近からEPDMの主骨格である炭化水素類の分解成分が発生しており、EPDMの熱分解が150℃付近から始まったことがわかる。このようにEGA-MSでは、熱環境の変化にともなう材料のガス発生特性を知ることができる。

第1図 EPDM加熱時のガス発生挙動

事例 2 リチウムイオン電池バインダーの定性

リチウムイオン電池の正極材に含まれるバインダー(高分子材料)についてTD-GC/MS(加熱脱離-ガスクロマトグラフ/質量分析装置:Thermal Desorption-Gas Chromatography-Mass Spectrometry)とPy-GC/MS(熱分解-ガスクロマトグラフ/質量分析装置:Pyrolysis-Gas Chromatography-Mass Spectrometry)を組み合わせて定性分析をおこなった事例を紹介する。特に製品においては、目的の高分子以外の有機成分が含まれる場合があり、検出される情報が複雑に入り交じり解析が難しくなることがある。このような場合、目的成分とそれ以外の成分を分離して分析をおこなう必要がある。今回分析した正極材には電解液(揮発性有機成分)が付着していたため、同一試料に対してTD-GC/MS(300℃加熱)とPy-GC/MS(600℃加熱)による分析を連続的に行う方法を適用した。各温度で発生したガスを同定した結果を第2図に示す。300℃では、電解液成分が主に検出されており、電解液(揮発性有機成分)が正極材から除去できていることがわかる。また、600℃で発生したガスには、フッ素を含む熱分解成分が検出されている。これはバインダーの熱分解生成物であり、その組成比をデータベースと照合した結果、バインダーがポリフッ化ビニリデンであることが確認できる。このように、複数の加熱発生ガス分析手法を組み合わせることで、精度の高い情報を得ることが可能である。

第2図 正極加熱時の発生ガス定性結果

当社では、今回紹介した事例以外にも加熱発生ガス分析に関する数多くの実績を保有している。また、お客様のニーズの変化に対応する新たな手法の開発にも日々取り組んでおり、今後も多種多様な材料や製品に対して、最適な分析手法の提案をしていく所存である。

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