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フラットパネルディスプレイ向け酸化物半導体評価用差動マイクロPCD装置の開発・本格販売開始について

お知らせ

2013.10.24

~ 世界初、成膜直後やTFT形成前のプロセス段階でのインライン評価が可能 ~
 

2013年10月22日
株式会社コベルコ科研
株式会社神戸製鋼所

 
(株)コベルコ科研(神戸製鋼の100%出資子会社:以下 コベルコ科研)はこのほど、フラットパネルディスプレイ(以下FPD)の薄膜トランジスタ(以下TFT)に用いられる酸化物半導体の特性を評価することが可能な差動マイクロPCD装置を開発しました。

本装置の実現により、TFTを形成することなく、インラインでTFT特性評価が世界で初めて可能となりました。これにより、高輝度化・低消費電力化の実現に向けて注目の高い酸化物半導体の歩留向上に貢献します。

コベルコ科研は、低温ポリシリコン(LTPS)薄膜向け差動マイクロPCD装置を長年手掛けてきましたが、(株)神戸製鋼所の技術協力により得られた、TFT形成の初期工程である酸化膜成膜段階で、TFT形成後の性能が予測可能であるとの知見をもとに、活用ノウハウを開発し、独自の判定手法を組み込むことで、酸化物半導体向けに展開、すでに一部のFPDメーカーに納入を始めています。

差動マイクロPCD法は、励起光源としてのレーザーと、時間に対するキャリア数の変化を捉えるプローブとしてのマイクロ波を利用した測定手法であるマイクロPCD法を神戸製鋼およびコベルコ科研が独自に改良し高感度化した手法であり、これにより得られる再結合ライフタイムは、微量の欠陥や汚染に鋭敏に反映し、電極付けなどを必要とせず非接触、非破壊で評価できることから、SiウェーハやSiデバイスの製造工程の代表的な管理技術となっています。コベルコ科研では10年前から、高精細FPDパネル向けLTPS薄膜の結晶化評価に差動マイクロPCD法を適用し、多くLTPS-FPD量産工場で採用されるに至りました。

今回、これまで培った差動マイクロPCD法による半導体評価技術を、近年注目が高まっているInGaZnOをはじめとする酸化物半導体薄膜に適用してその信号波形を解析したところ、TFTの移動度や安定性の評価が可能であることを見出しました。これまでは、TFTを実際に形成した後でなければその性能の評価ができませんでしたが、今回開発した差動マイクロPCD装置は、酸化物半導体を成膜した直後で、その特性を評価することが可能で、しかも、絶縁膜等が積層されたデバイス構造においても評価可能です。

これらの知見により、差動マイクロPCD装置を研究開発(R&D)時および量産ラインに適用することで、酸化物半導体TFTの特性を適切に管理でき、酸化物半導体を用いたFPDの開発を加速するとともに、量産時における歩留まり向上に貢献します。

なお、本装置は10/23-25に横浜にて開催されるFPD International展にてパネル展示される予定です。

【解説】

FPDは高精細化が進み、特に携帯・タブレット端末では高輝度化、低消費電力化、狭額縁化が求められます。FPDで用いられる半導体材料には従来、化学気相成長法(以下CVD:Chemical Vapor Deposition)で形成したアモルファスシリコン(以下a-Si)薄膜が用いられていましたが、半導体としてのポテンシャルを示すキャリア移動度が1cm2/Vs以下と小さく、FPDの高性能化が進むにつれて半導体材料の高移動度要求が高まっています。この要求に対して、LTPSを用いたTFTが既に量産されていますが、LTPSの工程は複雑で製造コストが高く、生産設備の限界で基板(マザーガラス)の大型化への対応が困難、といった課題がありました。

酸化物半導体材料は、東京工業大学細野秀雄教授が開発したInGaZnOに代表される酸化物材料で、スパッタリング法で成膜が可能です。酸化物でありながら、成膜条件を適切に制御することでシリコンのような半導体特性を得ることができ、キャリア移動度は10cm2/Vsと高い値を示します。スパッタリング法で成膜できるため、LTPSと比較して製造コストの問題や大型化の問題がありません。

一方で、酸化物半導体はディスプレイ適用を想定したストレス(正バイアス(信号印加)、光+負バイアス(待機))にて、特性が変化するといった問題があり、FPDの量産には、これら特性変化の少ない製造条件を見いだす必要がありました。実際特性変化はTFTの特性変化を測定することでしかわからないことが大きな課題でした。コベルコ科研および神戸製鋼所は、非接触、非破壊測定が可能な差動マイクロPCDで得られる減衰波形を解析することで、TFTの特性変化が少ない酸化物半導体薄膜が評価(予測)できることを発見しました。そしてLTPSの結晶化評価においてFPD量産工場ですでに採用されている薄膜用差動マイクロPCD装置を改良することによって、酸化物半導体評価装置を開発しました。本装置をR&Dおよび量産ラインに適用することで、酸化物半導体TFTの特性を適切に管理でき、酸化物半導体を用いたFPDの開発を加速するとともに、量産時における歩留まり向上に貢献することが期待されます。

20131023-2.jpgのサムネイル画像

差動マイクロPCD装置測定結果(一例)

  

20131023.jpgのサムネイル画像
差動マイクロPCD装置(LTA-2850SPHII/M2