コベルコ科研・技術ノート

こべるにくす

Vol.34

No.62

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  4. 原子分解能EDXマッピング再構築による高精度化技術

新技術・新製品のご紹介

新技術

原子分解能EDXマッピング再構築による高精度化技術

❶ 概要

このたび最新の走査透過型電子顕微鏡(STEM:Thermo Fisher Scientific社製Spectra Ultra)を導入いたしました。同装置は以下の革新的な機能を備えています。

  • ・高輝度電界放出電子銃(FEG)
  • ・球面収差補正装置(Cs-corrector)
  • ・熱安定性の高い対物レンズ
  • ・6基の高感度エネルギー分散型X線(EDX)検出器

これらにより、低ダメージで原子分解能のEDXマッピングが可能になりました。とくに、熱安定性の高い対物レンズは加速電圧の選択肢を広げ、高感度EDX検出器は低ビーム電流でも十分な信号を取得できるため、試料損傷を最小限に抑えた観察を可能にします。しかし原子分解能観察は、設備周辺の環境に起因した外乱を受けやすく、これが観察データにノイズやドリフトを引き起こします。EDXマップの撮影は最短で5分、長い場合は1時間以上かかるため、その間に外乱を受けると撮影データにぼけや歪みが生じ、「撮影失敗」となってしまいます。本技術は、従来なら「撮影失敗」とされていたデータを回収・再生することを目的に開発されました。さらに、許容範囲内のデータに対しても高品位化を実現し、従来手法を超える成果を得ています。本稿では、その取り組みと成果を紹介します。

❷ 高精度化技術による再構築事例

図1は、6061アルミニウム合金中の析出物を原子分解能で撮影した高角度環状暗視野(HAADF-STEM)像とEDXマッピング結果です。一見すると良好なデータですが、撮影時の積算フレームを確認すると、図2に示すようにわずかなドリフトが見られます。図2左側のHAADF-STEM像では、EDXマップでは目立たないぼけが明確に確認できます。

図3に本技術の概略図を示します。通常、EDXマップ取得時にはドリフト補正を行います。具体的には、補正後のビーム位置に前のフレームを重ねる処理を施します。積算されたデータに微小な位置ずれが蓄積していくことで、画像の広がりやぼけを引き起こします。

開発した手法では、積算されたデータを改めてフレームごとに分解し、各フレーム間で画像相関を用いて再構成します。EDXマップ単体では1フレーム分の情報が乏しいため、同時取得したHAADF-STEM像の画像相関を利用し、EDXマップを再構成します。これにより、ドリフトのない積算画像を生成できます。

図4に再構成後のEDXマッピング結果とHAADF-STEM像を示します。従来の積算画像と比較して、EDXマップは非常にクリアになり、HAADF-STEM像も滑らかで高品位な結果が得られました。

図16061アルミニウム合金中の析出物の原子分解能観察結果
左:EDXマップ、右:対応するHAADF-STEM像

図2積算されたHAADF像、同時取得した各フレーム(上段)と注目領域の拡大像(下段)

図3EDXマッピング再構築手法

図4再構築後のEDXマッピング結果とHAADF-STEM像

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