コベルコ科研・技術ノート
こべるにくす
Vol.34
No.62
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ここにも科学No.24
バーコード
白と黒が織りなす奥深き世界
一般にバーコード(一次元シンボルあるいは二次元シンボル)と呼ばれる、わずか数センチ四方の白黒模様。この中にどんな情報がどれだけ詰め込まれているのか、私たちが普段その「中身」にまで思いを巡らせることは少ない。しかし、ひとたびリーダーにかざすと、そこには商品名や価格だけでなく、在庫状況や物流の追跡データといった多角的な情報が含まれていることが分かる。かつては単なる「値札」の代わりに過ぎなかったこの縞模様は、今や多量のデータを凝縮した「情報のカプセル」へと進化しつつある。
「実はバーコードの原理は、驚くほどシンプルなんです」――そう語るのは、自動認識技術の標準化・規格管理を担う日本自動認識システム協会(JAISA)の主任研究員・藤田眞二氏。根幹にあるのは「光の反射」という基本的な物理法則だという。「黒い部分は光を吸収し、白い部分は光を反射します。この明暗をセンサーで読み取り、0と1のデジタルデータに変換する。つまりバーコードとは、情報を黒と白のインクに置き換えるという極めてアナログな技術だともいえるわけです」。
1940年代にアメリカで原型が発明されたバーコードは、日本でも1980年代半ばのコンビニ導入を機に普及。レジの打ち間違いを防ぎ、作業者の負担まで軽減できることから、情報化社会に不可欠な技術としてすぐに定着を果たした。そして時代が進むにつれ、社会のニーズはさらに膨れ上がる。「産地は?」「賞味期限は?」「製造工程は?」―。「より多くの情報を、限られたスペースに詰め込みたい。この切実な欲求こそが新たな技術革新の原動力となりました」と藤田氏。その代表例が、1994年に生み出した二次元シンボル「QRコード」だ。縦・横の『面』を使った表現により、情報量は従来の20文字程度から、一気に数千文字にまで拡大。また過酷な製造現場でも耐えうる高い信頼性も、この方式が世の中に広まるのに大きな役割を果たした。
そして近年、バーコードから派生した技術はさらに広範囲で活躍中だ。たとえば一部の地下鉄では、QRコードを用いたホームドアの制御が実施されている。これは車両の窓に貼られたシンボルをカメラが読み取り、車両種別やドア位置を瞬時に判別してホームドアの開閉を連動させる仕組みだという。また行政からの通知に添えられた「SPコード」を使えば内容を音声で読み上げてもらうことができ、こちらも行政文書のバリアフリー化に一役買っている。これらの技術に共通するのはコスト面の低さ。高価なシステムを導入せずとも、シールたった一枚でさまざまな目的を実現できるのは大きな利点と言えるだろう。
では今後、このバーコード技術はどのように発展していくのだろうか。「これほどシンプルかつ信頼性の高い出力手段は存在しません。このため、より小さなスペースにいかに多くの情報を集約するか、この方向でさらに多くの試行錯誤が繰り返されていくはずです」と藤田氏。実際、赤外線でのみ読み取り可能な「ステルスバーコード」や、色や濃淡を要素に加えることで情報量のさらなる増加を図る「カラーバーコード」といった次世代技術も徐々に広がりつつあるという。
このように考えると、白と黒で描かれたバーコードは、複雑なデータを効率的かつ確実に伝えるために人類が辿り着いた究極の「工学デザイン」の一つだとまで思える。私たちの生活の至る所に潜む小さな「情報のカプセル」。確かに私たちの肉眼では、そこに刻まれた内容を直接読むことはできない。しかし、この簡素な白黒模様をじっと見つめると、少しでも多くの情報を詰め込もうと心血を注いできた技術者たちの知恵の足跡を、その奥にしっかりと感じ取れるに違いない。
一次元シンボルの構造

バーコードリーダーの読み取り原理

