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パワーデバイス向けAg焼結接合材に関する実環境模擬の試作評価技術

概要

本技術では、 実装向けのAgペースト等を用いた焼結接合の実用化検討に必要な評価技術として、焼結シートや接合体の試作から始まり、機械特性値や熱物性値等の基本特性値の取得および実装時の放熱性で課題となる界面熱抵抗の測定1)、また開発材料や接合界面を詳細に組織観察することで接合状態を把握することができます。さらに、実装環境を模擬した状態での基板の反りや変位など、接合性に影響するデータをDIC(デジタル画像相関法)2)などで取得することで実装シミュレーションなどの検証等に活用できるデータを提供いたします。

目的・前提

脱炭素社会を目指すなかで、昨今のモビリティのHV化、電動化やAI・データセンタ等への電力需要に応えるための、電子デバイスの高効率化・高出力化のニーズを背景として、SiC,GaN等のパワー半導体のモジュール適用が進んでいます。その結果、200℃以上での高温作動環境に耐えうる実装部品が必要とされてきており、デバイス接合材としても従来のSn系はんだに代わるAgやCuのナノ焼結接合の実装化が加速してきていますが3)、高温化に伴う物性値の取得や接合界面の制御などの開発課題も残されています。

既存の評価手法と課題・限界

メーカー提供の推奨条件で焼成されたAg焼結材の評価を行うことが多いですが、実機に近い条件や任意の条件で加圧・焼成したデータの取得は、ユーザー側は設備等が必要になり容易ではないです。また実条件を模擬した接合状態での、熱特性や基板の反り等のデータを取得する試みも少ないように思われます。

新技術の詳細

  • 焼結温度や加圧力など任意に条件を変えて試作したAg焼結材料のデータを取得いたします。
  • チップ接合体も同様に任意に条件を変えた接合材を試作し、熱抵抗等のデータを取得いたします。
  • 実機の接合状態を模擬した状態(基板にチップを載せて加圧や加熱を付与)で、基板の反り等を測定いたします。
チップ実装時に焼結接合する際の断面イメージを作図しており、問題となる界面部分を赤点線で記している。

技術内容AAg焼結シートの試作や引張特性・熱物性・組織の評価

Ag焼結シートをお客様のご希望各種条件に設定して試作できるように、ホットプレートと金型を組み込んでAgペーストの焼結シート試作に対応いたします。
また、試作シートを用いて引張特性や熱物性値の取得や焼結状態をSEM-EBSDなどで詳細に確認することが可能です。

(1)焼結シートの試作および引張特性評価

室温の引張S-S線図を示す。加圧力が低い8MPaは伸びが低く。20MPaになると伸びが向上し強度もUPすることが分かる。250℃のS-S線図の比較を示す。室温に比べて両社とも伸びが数%台に向上いていることを示している。加圧力の影響は小さくなることが示されている。

(2)焼結シートの熱物性取得

Ag焼結シートの室温における各種物性の測定事例(密度、比熱、熱拡散率、熱伝導率、ヤング率、線膨張係数)を一覧表で示している。Ag焼結シートの各種物性(上から比熱、熱伝導率、線膨張率)の温度依存性(室温~200℃)の測定事例を示している。

(3)Ag焼結体の微細組織観察(SEM-EBSD)

  1. 焼結条件(温度、圧力など)を変えたものを試作し、室温~高温の引張特性やS-S線図を取得いたします。
    加圧力が高いほうが室温における引張特性が高く、伸びは両者ともに1%未満でした。一方、高温の250℃では両者に大きな違いは認められず、ともに引張応力は20MPa程度を示し、伸びが増大し延性破壊の傾向になることが分かります。
  2. Ag焼結シートの各種熱物性測定における温度依存性を取得することが可能です。
  3. ミクロンスケールから数十ナノスケールまでの焼結状態を微視的に組織観察できるように試料調製し、SEM-EBSDなどを用いて観察いたします。
    結晶粒だけでなくネッキングやポロシティ等の状態が詳細に観察されていることが分かります。

技術内容Bチップ接合体の試作や熱物性評価(界面熱抵抗)

接合した結果、界面の接合状態は強度信頼性だけでなく熱伝導性にも熱抵抗として影響しますので、接合状態を保ったまま熱抵抗を測定することが、放熱性などを考える上で重要な要素となります。

(4)焼結接合部の熱抵抗測定

チップ/基板の接合体を模擬した接合体を任意の接合条件で試作することができ(左図)、さらに放熱性に関する界面熱抵抗の測定(右図)、界面の非破壊調査、断面観察などの評価に対応いたします。
界面熱抵抗の測定結果から、Ag焼結材はSn-Agはんだに比べて熱抵抗が小さいことが分かります。
レーザーフラッシュ法を用い接合体の熱拡散率を測定している断面イメージを示している。界面熱抵抗を算出する原理のイメージ図と算出式を示している。従来のハンダに比べて、Ag焼結体のほうが熱抵抗が低いことを示している。厚みが厚いほど熱抵抗が高い事を示している。界面熱抵抗を算出する原理のイメージ図と算出式を示している。

レーザーフラッシュ法による界面熱抵抗の測定原理および測定結果の比較(Sn-AgはんだとAg焼結体)

技術内容C接合の実環境を模擬した基板の反り評価

接合過程においては各素材に熱が付与されることで線膨張率差の影響により基板などに反りが生じると、強度的な信頼性にも影響しますので、接合模擬環境下で反りの形状データを取得することは、CAE解析などにも必要な役割を果たします。

(5)基板加熱時の反り測定事例(DIC:デジタル画像相関法、ビデオカメラ計測)

接合の実環境を模擬した加熱過程における基板の形状変化をDICで計測することで、基板の四隅が高さ方向に立ち上がり、お椀状に反る様子がリアルタイムで分かります。
DICで加熱しながら基板が変形する状態を二つのカメラで測定する状況を示している。室温から加熱する過程で、基板の厚み方向(Z方向)の変形量を色マップで表示している。高温になると四隅が赤くなり反り上がっていることが示されている。また、冷却すると反りは収まるが、ややZ方向の変形が残っていることが分かる。

(6)基板の反り測定(実環境を模擬したビデオ測定)

接合の実環境に近い、加圧+加熱状態における基板の反りを側面からビデオカメラで拡大測定することで、加圧の影響による反りへの影響が確認されます。
加熱し、さらに加圧しながら基板反り量を実体の側面からビデオカメラで撮影している状況を示している。実体の反り(すきま)をカメラで拡大観察している写真を示している。面圧を22MPa負荷することで、実体の反り(すきま)がかなり小さくなっているところを写真dえ示している。面圧を変化させることで、基板の反り量が変化する結果を示している。

まとめ

今後、実装接合向けのAg焼結材はメーカー推奨条件での性能だけでなく、実操業条件などを模擬した焼結条件での性能把握も必要になると考えられます。そこで、弊社では焼結条件を任意に制御した焼結材や接合体を試作することを切り口として、それらの機械的性質や熱的評価から、基板の反り変形評価など、実装部品開発や実装シミュレーションに必要とされる実環境模擬状態での評価結果を提供いたします。

執筆者

技術本部 材料ソリューションセンター 技術部 非鉄試作技術室|加々尾 慎哉(かがお しんや)
技術本部 材料ソリューションセンター 技術部 試験評価技術室|金築 俊介(かねつき しゅんすけ)

よくある質問

Agペーストを加熱中に溶剤からのガスが発生しても対応できますか?
ガス排気しながら加熱できますので、安全上問題ないガスであれば対応可能です。
焼結条件のパラメータは何を制御することができますか?
金型の加熱温度(場合によっては加熱速度)、加圧時の面圧、保持時間などです。
Ag焼結シートの熱伝導率を測定できる最小厚みはどの程度ですか?
約0.1mm程度となります。

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