液体水素利用に関する課題等の概説
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- 2050年 カーボンニュートラル社会に向けた課題「CO₂排出の削減」
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液体水素とは?
水素は-253°Cという極低温で液化します。この状態を液体水素と呼んでいます。液体水素は非常に軽い液体で、 その密度は70.8kg/m3(-253°Cの時)で重量エネルギー密度はガソリンよりも大きい液体(水素:142MJ/kg、 ガソリン:49MJ/kg)になります。現在は、ロケット燃料として主に活用されています。
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液体水素サプライチェーンにおける課題
水素はカーボンニュートラル達成のために重要な位置づけとされています。ただ、水素ガスの体積エネルギー密 度は12MJ/m3と低いため、高効率な輸送・貯蔵を考える場合、水素ガスの高圧化だけでなく、液体水素での利用 も必要と考えられています。経済産業省では、2050年カーボンニュートラル達成のために必要な液体水素サプラ イチェーンの目標を下記の様に示しています。
産業構造審議会 グリーンイノベーションプロジェクト部会 エネルギー構造転換分野ワーキンググループ資料4
水素関連プロジェクトの研究開発・社会実装の方向性より抜粋 -
輸送面の課題
液体水素は、現在、ローリーで輸送されています。液体水素は水素ガ スの1/800の体積になり高効率なのですが、-253°Cという極低温を維 持するために断熱し気化を防ぐ事が必要になります。現在、大型ローリー(40m3/台)が走行し ていますので大きな問題は無いように思われ ます。ただ、カーボンニュートラル達成のた めには輸送時の二酸化炭素排出も削減する事 も必要になりますので、輸送手段の軽量化、 電動化等々が必要になります。さらに、需要 が増加した場合には大型化という事の検討も 必要になる可能性があると考えています。
また、トレーラーやローリーで輸送する事が効果的な距離よりも近距 離での輸送に関しては東京オリンピックでも利用されていたパイプラ インによる輸送の検討も必要になります。現在は、工場内での供給等 をメインに検討がされているようですが、普及拡大に伴ってパイプラ インのニーズは増加すると予想されます。
さらに、海外からの輸送に関しては、技術研究組CO₂フリー水素サプ ライチェーン推進機構「HySTRA」にて液体水素輸送専用船が開発さ れ実証実験が開始されています。これら船舶での輸送の場合には、貯 蔵設備の大型化、船舶の脱炭素化が課題になります。 -
貯蔵面の課題
今後の水素需要の計画では2050年には年間2000万トンもの水素の需要が予想されています。このためには、大量の液体水素貯蔵する必要があります。ただ、液体水素貯蔵で実用化しているタンク(球形)は1250m3/基程度度なので、需要を満足するためには大型化が必要になります。
「グリーンイノベーション計画」では、一基あたり50,000m3のタンクの必要性に言及しています。大型化をする場合には-253℃という極低温の液体を貯蔵するため、断熱等の手法だけでなく液体水素温度での材料、溶接部の安全性信頼性評価、構造健全性の課題もあります。 -
液体水素環境下における材料の課題
液体水素は限定された用途で用いられてきたため、大型貯槽設備等の工業設計に必要な材料特性等のデータは十分であるとは言えません。また、大型貯槽等の実現のためには、素材の材料特性だけではなく、溶接継手等の疲労強度等も含めたさまざまな材料データが必要になります。
液体水素は温度が-253℃と極低温環境です。この温度域では、材料内での拡散等もほぼ発生しないと考えられますので、液体水素環境での機器の為の材料試験等は、液体水素よりも温度が低い液体ヘリウムを用いた温度域(-269℃)で試験ができれば材料特性は評価できると考えられています。
また、液体水素を扱う機器類は、室温と液体水素温度の間を往復する事になります。そのための材料面の調査、検討も必要になると考えています。 -
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