コベルコ科研・技術ノート

こべるにくす

Vol.34

No.62

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  4. アルミ鋳造部品の衝突試験とFEM解析

Technical
Report
D

アルミ鋳造部品の衝突試験とFEM解析

アルミ鋳造部品を自動車ボディなどに採用する場合、衝突時の破壊挙動を試験評価するとともにCAEなどによる予測技術も必要とされる。アルミ鋳造部品は例えば圧延材などと比較して、プロセス影響による材料強度ムラがあるといわれており、既にCAEによる影響評価なども行われている1)

多くの鋳造部品は材料特性を取得する際に実部品から試験片を採取して引張試験を行うか、プロセス条件をできるだけ合わせた試験片用のサンプル(例えば板材や丸棒品)から試験片を採取することが多い。実部品から試験片を採取する場合には、試験片サイズや採取位置の制約があり、また試験片用のサンプルを製作する場合にはプロセス条件の合わせこみが難しく、鋳造部品の材料特性を忠実に取得する試験を行うことは簡単ではない。そこで本件では、まず実部品の特性模擬試験またはデータ採取試験として有効な、部品形状を単純化したハット型試験体用鋳造金型を製作し、試験体を試作した。そして落錘試験と材料特性試験を行い、得られた試験データを基にCAEの高精度化に取り組み、鋳造部品の破壊挙動をおおよそ予測できることを確認した。

ここでは、この試験体の試作内容や、落錘試験と材料特性試験を実施した結果およびFEM解析による予測技術などを紹介する。

D-1ハット型試験体の作製

鋳造部品は設計自由度が高く複雑な形状を作製できるが、いっぽうでプロセス条件によっては欠陥が生じることが知られている。このことは、鋳造部品は部位により冷却速度や鋳込み長さが異なり、機械的特性も影響を受けるため、FEM解析の難易度が上がる要因となると思われる。そこで、自動車ボディの部品形状を単純化したアルミ鋳造部品を設計し、専用金型を製作した。部品形状は予め引張試験片などを採取することを想定して平坦な部分を確保し、また静的な軸圧壊試験や落錘試験への使用を想定して天板やリブを設け、圧壊挙動が安定するよう工夫した。また試験体を比較的小型とすることで試作や試験コスト、およびFEM解析コストの低減も見据えた。鋳造用の合金はSilafont-36(成分は表1参照)とし、溶解温度720℃、金型温度180~200℃程度でTOYO製200tonダイカストマシンを用いた。試験体外観を図1に示す。ハット型試験体は、上部に凹み部を設け断面を高さ方向に変化させることで、落錘試験を行った際に上側から順次圧壊するような形状とした。溶湯温度や潤滑条件などの探索の後に外観検査した結果良品と判定されたものを各種試験用に採用した。

これらにより様々な条件でのアルミ鋳造部品の衝突破壊評価に適した試験体となったと考えている。例えば合金成分の異なる試験体を作製することや金型温度や射出条件などを変更した試験体を作製することで、実際の製品ラインでは検証が難しい条件での強度特性への影響について試験評価が可能となる。

表1アルミ鋳造合金の成分

図1作製したハット型試験体

D-2落錘試験

作製した試験体に対して落錘試験を実施した。当社所有の落錘試験装置を用いて、重錘質量174kg、速度30km/h、投入エネルギー量5kJとした。試験は5体とした。なお、試験体上端から100mmにて重錘をストップさせている。荷重計測は試験体固定板の下部に設置したロードセルで行った。

得られた荷重変位および吸収エネルギー変位線図を図2、3に示す。一波目の最大荷重は5体でほぼ同じ値となっているが、二波目以降の荷重挙動は試験体により差があることが確認できる。吸収エネルギー量については変位量100mmまでで約3~4kJの範囲であり、荷重変位線図より試験体ごとの差がすくない。高速度カメラで撮影した破壊の様子を図4に示す。荷重変位の一波目は、試験体上部のくびれ部が内側に折れ曲がり破壊するタイミングであり、二波目以降はおおよそリブ付け根を起点に側壁が折れ曲がり順次破壊している様子が確認できる。高速度カメラ画像から確認できる試験体の壊れ方としては試験体ごとの差は小さいと考えられるが、荷重変位や吸収エネルギーにはばらつきがあり、鋳造部品特有の材料特性ばらつきに起因すると考えられる。

図2落錘試験 荷重変位線図

図3落錘試験 吸収エネルギー変位線図

図4落錘試験 高速度カメラによる試験体の破壊状況

D-3材料特性および破断特性の取得

ハット型試験体から材料および破断試験用のテストピースを採取し、単軸引張試験、切欠き付き単軸引張試験、せん断試験およびVDA曲げ試験を行った。テストピースの採取イメージを図5に示す。引張試験での応力三軸度ηは単軸引張試験でη=1/3、切欠き付き単軸引張試験でη=1/√3、せん断試験でη=0である。引張試験では局所的なひずみをとらえるためにデジタル画像相関法(DIC)を用いたひずみ解析を行った。試験の結果得られた荷重―変位線図を図6に示す。また試験後の試験片の外観写真(代表:単軸引張試験片)を図7に、DICによるひずみ解析結果を図8に示す。DICを用いる利点としては、試験後に標点間距離を自由に選択することができ、とくに試験片中央部以外で破断した際には有効である。

図5試験片採取イメージ

図6破断試験 荷重クロスヘッド変位線図

図7試験後試験片外観写真(代表:単軸引張試験)

図8DICによるひずみ解析(代表例)

つぎにこれらの試験を模擬したFEM解析を行い、衝突解析用の応力三軸度依存性を考慮した破断モデル2)のパラメータを求めた。使用した解析ソフトはAbaqus standard20243)であり、静的陰解法を用いて解析を行った。FEMモデルは六面体一次要素を用いて評価部付近は要素長が約0.5mmとなるように調整した。破断モデルを用いた各試験のFEM解析結果と試験結果の比較を図9に示す。いずれの試験でもおよそ荷重―変位挙動がFEMと試験で一致しており、試験で生じる応力状態での破壊挙動を再現できる破断モデルパラメータが得られた。

図9破断FEM 荷重変位線図

D-4落錘FEM解析

ハット型試験体を対象としたFEM解析を実施した。解析モデルは六面体一次要素を用いてモデル化し、解析ソフトはAbaqus Explicit 20243)を用い、動的陽解法による応力解析を行った。使用する材料特性と破断モデルはひずみ速度依存性がないものとして前項で取得した結果を用いた。

得られた荷重ストローク線図と吸収エネルギー線図を試験結果と合わせて図10、11に示す。また試験体の変形と破壊の様子を図12に示す。図中のコンターカラーはミゼス応力を表している。FEM解析においても上部のくびれ部位から破壊が始まり、順次側壁が曲げ変形により破壊していく様子が再現されている。荷重変位線図は試験と比較すると一波目、二波目の荷重挙動は一致していることが確認できるが、FEM解析では変位量15mm以降荷重に差が表れている。そのため吸収エネルギー量も変位量15mm付近まではよく一致しているもののそれ以降はFEM解析の方が大きくなっている。これは試験では試験体がリブ根元から割れているが、解析ではリブ根元から割れる挙動が再現できておらず、荷重が高くなったと思われる。リブ根元は鋳造欠陥が生じやすく、比較的割れやすいと思われるが、本FEMモデルでは部位による破断ひずみへの影響までは考慮できていないため、このような差が生じている可能性がある。

このような軸圧壊による破壊挙動については、応力三軸度依存の破断モデルを用いたFEM解析により吸収エネルギー量はおおよそ予測できることが確認できた。また破壊していく様子も試験結果とおよそ一致しているが、破壊挙動については、試験とFEMでの差があり、FEMモデル化の改善の余地があると考えられる。

図10落錘試験とFEM 荷重変位の比較

図11落錘試験とFEM 吸収エネルギー変位の比較

図12落錘FEM ミゼス応力分布と変形状態図

本稿ではアルミ鋳造部品の衝突破壊挙動について、当社オリジナルのハット型試験体による各種評価を行った。これにより同一形状での合金成分やプロセス条件の影響を評価しやすくするとともに、CAEの予測精度の検証を行いやすくしたものである。読者の方々にはこの試験体を活用して各種因子の影響評価に活用いただければ幸いである。また現在アルミ鋳造部品の機械的特性に対して流動長や部位ごとの影響について試験評価を行っており、今後FEMモデルにも反映させ、予測精度の向上を図る予定である。

参考文献

  1. *1)D. Funke.RWTH Aachen University, Results from Research and Development, Volume 36 (2023)
  2. *2)Y. Bai et al. Int. J. Plasticity. 2008, Vol.24, No.6, p.1071-1096
  3. *3)Dassault Systems.: Abaqus 2024 User's manual: Dassault Systems Simulia Corp.

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